とある地方公務員のブログ

このブログでは地方公務員が日々考えたことや思ったことをなんとなく書きます。

3代続けて市役所職員・・・「家業」化する地方公務員

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家業というのは、職人の世界や自営業だけ、と思っているかもしれませんが、産業に乏しい地方においては、公務員もまた家業となっている側面があります。

結論 役所も結局、コネの力が大きく影響する

地方においては主要産業が役所しかないと前回のエントリーで書きましたが、どのような業界でもそうだと思いますが、縁故というものは個人の力を超越した力を持っているものです。スキルアップやら自己啓発以上に、コネ、というものが持つ重みは非常に恐ろしくも強い影響力があります。

地方はムラ社会と言われますが、いくら実力があってもその縁故のネットワークに入れるか否かというのは、今後の就職、仕事の面でも大きく影響します。コネ採用という言葉がありますが、結局採用基準の一つとしては、「こいつはコミュニティの和を乱さないか?」というところが重視され、どこの馬の骨ともわからんやつよりも、○○の紹介、○○の親族の方のほうが信用を担保する材料にはなります。なので、同じ実力、同じテストの点数であれば、最後の最後はそのような些細だけど、自分のまわり、関係性が強みとなるわけです。

市役所職員、役場の人間はいかに地域に溶け込み、地域の調整役を果たすのか、という点が他の公務員(国家公務員、県庁職員、税務署職員)とは異なる特徴があります。

家業としての公務員

公務員を一つの稼業と同じように、営んでいるファミリーがあります。親父市役所、息子も市役所、弟も市役所というような感じですね。また、親父市役所、息子県庁、息子県警というパターンもあります。公務員というのは公務員同士で絡むので、公務員の知り合いも増えるわけですね。(下手したら、父親も母親も公務員夫婦というパターンもあります。)

地方において主要産業が役所関係しかないので、親父が息子を地元に残そう(長男)と思えば公務員を勧めるを自明の理です。民間の厳しさは特に商工関係の職員であればよく知っているわけです。談合のような業界内のボスとの関係や、すでに飽和状態の市場において県外に販路拡大を図っていこうにも非常に弱い経営基盤ではそれも不可能。そんな地方の民間市場においては、公的セクション、役所しか残っていないのです。

それに親父だけでなく、息子も地元に残りたいと思えば、役所しかないよなぁとなるわけです。

なぜ公務員の息子は、公務員採用の面で圧倒的に有利か

公務員の息子は、公務員の感覚、考え方がわかる環境にあるんですね。別に人事当局に直接のコネなんて作らなくても、自然と親父とよく飲んでいる同僚が人事関係と仲が良いとか、どんな人が採用されるのか、といったことが聞ける環境にあります。

ちなみに、人事には議会のような外野も容易に口を出せません。臨時職員には口利きはできるでしょうが、採用ともなれば一議員の意見など通りません。それに市長が強い人事権をもっていても部局長クラスから編成される採用委員会方式などで取るため、コネ採用とかうんぬんではなく、単純に公務員になるセンスがあるやつが通るし、そのセンスは普段の生活で培われるものだからです。

OB訪問なんてしなくても、気軽に現役、OBとつながるチャンスが大いにあるは最大の強みであり、アドバンテージは持っているわけです。

しかし、一方で逆に親族ゆえに採用に不利になることもあります。結局、家業として成立しているのは、その家の役所内における「信用」「ブランド」があるからなんですね。あの家の人間はちゃんと仕事をする、世襲だろうがなんだろうが、仕事をするんならば採用する、だけの話です。ざっくりいえば、係長級にもなれない、平職員のせがれよりも幹部級のせがれの方が、公務員としての素質があるだろうと考えるからです。

なので、採用とかで自分の親父も役所なので、それで志望しました。と、いうのは構わないんですが、その親父が今まで仕事をしてきたのか?ブランド価値があるのか?というのが問われてしまうので、そこは良くも悪くも自分の実力だけではないということですね。

「ジバン」「カンバン」が必要な地方公務員

たとえ、息子が一次試験も落ちちゃうほどなかなか勉強ができなくても、たとえば、清掃工場や庁舎清掃員のいわゆる「現業枠」に食い込むチャンスがありますし、ある程度キャリアを積んで職種転換という方法もあります。

都市部の役所の状況はよくわかりませんが、結局のところ、家業として成立するのは、自分自身の実力というよりも、自分の「前任者」である父親、祖父、母親などといった今までの積み重ねでできたブランド「カンバン」があるからなんですね。地域に入っていくときも、○○のせがれということは地域も受け入れやすいわけです。どこぞの馬の骨、地域や役所といったコミュニティでしっかり根を張ってきたのか、それがいわゆる「ジバン」というものであり、公務員に必要な「ジバン」「カンバン」であるということは、地方公務員を志望する方は見落としがちなんですね。

私自身は、事務屋であるので、いわゆる技術屋(土木職員、建築職員など)の採用の実情は詳しくは語れませんが、それもやはり、地域に関わる地方公務員という点では同じでありますので、スキル、資格、学歴、といったものも当然大切ですが、しっかりと地域の話せるのか、ちゃんと信用を傷つけないのか、役所という看板を高められるのか、といったことが必要なわけです。

地方議員といえば、号泣県議に代表されるようにしょうもないことをしている奴と思われがちですが、結局地方公務員も地方議員にも負けずとも劣らない、政治力、調整力、信用が求められると思います。確かに市役所の仕事は、窓口から税、国保、財政、総務、商工、生活保護、非常に多岐にわたり、勉強ももちろん大切です。しかし、それら専門知識も市民という行政の素人さんに理解を得て、初めて仕事が成立する点をわすれてはならないので、彼らがわかるような言葉、信頼関係を作っていくことが何よりも大切になるでしょう。

なので、まだまだ全体からいえば少数ですが、半ば家業化、世襲化している地方公務員について書こうと思いましたが、それを支える役所内、地域における「信用」が大切だというだということですね。