とある地方公務員のブログ

このブログでは地方公務員が日々考えたことや思ったことをなんとなく書きます。

補助金と規制で守られた地方経済圏の消耗

 

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地方自治体の役割の一つとして、地域活性化、地方産業振興の推進があります。そこで注目されるのが、現在の安倍政権目玉政策の一つ、地方創生です。

 


そもそも地方創生ってバラマキ?

 

 今後、地方創生の名のもとに、予算をつけるので、うちの役所にも、その対応として、地方創生対策プロジェクトチームなるものが設置されました。

 
 おそらく、この地方創生の意図は、今までの地産地消、地産外商路線を引き継ぎ、中央に依存せずに自立できる自治体を目指すためにあると思うからです。
 
とはいえ、地方民の気持ちとしては今でも国のバラマキを待っていると思うし、地方創生=バラマキだとしか思ってないのではないでしょうか。
 
 

仕事したかったら、金持ってこい

 今年もすでに終わりましたが、3月議会に向けて財政当局による財政査定があります。
 
 査定を経験したらわかりますが、財政の職員は、基本的にシーリングの枠に収めればオッケーなので、歳出の中身でなくて、節でまるっと削ります。特に経常予算はバシバシ削られます。
 
 そりゃあ、一財(一般財源)は有限なのでもっと有効に使われるべきですが、なかなか特財(特定財源)をもってくるのは厳しいですし、起債やら国費といった歳入スキームの構築は、基本的にほとんどの職員が苦手とするところです。
 
 なので、県や国の出先機関と連携を取らなければ、事業ができないのが現実のようです。
 
 仕事をしたければ、いかに歳入を引っ張ってくるか、市の財政と強力なパイプがない限り、一財獲得はできないでしょう。
 

補助金ありきの地方産業

 
 さて、地方経済は、行政主体の生活圏、経済圏となっているので、いくら地域の自立を促しても、なかなか困難なのが現実です。
 
 銀行も補助事業活用を前提としてあったり、地域組織もまずは予算確保を前提としてあったりという現状です。
 
 しかし、基本的に行政主導の産業政策的な事業は稼げないし、儲からないんだと思います。
 
例えば、地元でタケノコが取れるから、タケノコのパックを作る工事を国費充てて作って、さらに県産品を売るアンテナショップを東京の一等地に作るとか、税金でも使わない限り、そんな無茶な事業はできません。
 
普通の感覚なら、リサーチして商品開発するかどうか決めますが、最初から商品開発ありきでスタートするのです。
 
確かにサプライサイド的な発想、良いもの作れば売れるんだ!なら正解かもしれませんが、こんなにモノが売れない時代に、デマンドサイドを軽視して、売れるわけないのですね。
 
結局販売ルートは無いから、これまた県や農水省総務省主催の物産展しか出せない。そんなの業界人しか来ないのにね。
 

役人にマーケティングはできません

 
そもそも、行政がマーケティングなんてできないし、自称マーケターを雇ってま、本当に正しいかわからないわけです。そこで実際は、東京のコンサルの人が地方再生請負人みたいな肩書きで乗り込んでくるんですよね。
 
観光振興でいえば、うどん県やら惜しい広島やら、地方振興マーケティングが流行してますが、実際は観光協会が大手広告代理店に事業をほぼ丸投げしてるだけなのですよね。
 
が、繰り返しますが、お金の工面と素人レベルのフォローしかできないのが市役所の産業政策の実態なのです。
 
別に成功しようがしまいが、給与は影響ないし、仕事してるほうが議会にも説明つきますしね。
 
 

無駄金かもしれないけど、やらないよりはマシ

 
たとえば、中山間に農水省の補助をもってきたところで、人材はおらんわ、給与は低いわ、産業としての定着もままなりません。
 
仮に成功しなくても何もしないよりはマシなので、とりあえず仕事を作るんですね。それに、どうせ担当もコロコロ人事異動するので、誰も責任は取らない、という体質は役所ならではでしょう。
 
 

競争よりゆるく談合

 
行政が商売の素人である一方で、地方の経済界はどうかというと、都市部のようにマーケットが機能しないのも、地方経済圏の特徴です。なので、民間に任せたくても地元企業に受け皿がないのですね。
 
価格競争よりも、談合しないと潰れる。地方経済は、競争ではなく、ゆるく談合が基本です。
 
それは、公共事業、小規模工事から、印刷機のリース契約、システムの保守、浄化槽の維持にいたるまで、役所の委託業ってたくさんあって、それだけ業界の組合がしっかり連携してるのですよね。
 
だから、地方で仕事ができる人というのは、役所に顔がきく、業界のとりまとめができるといった、もはや商売人というよりも、政治家に近いですね。
 
 

地方経済圏の基本は補助金と規制でできている。

 
地方経済は、政府の産業保護政策が無ければつぶれます。政治の目的が、弱者保護、マーケットでは捨てられる分野を守るのが使命なのだとしたら、産業政策は必要かもしれません。
 
だって地方は、民間のようにゆるやかなフェードアウトなんてできないのですから、、。
利益誘導型、利益保護型政治家が結局、地方には必要なんですね。
 
 

地方では金は稼ぐものでなく、もらってくるもの

 
地方における、主要産業は、相変わらず、役所、農協、JR、電力、郵便局、病院、地銀、ごく一部の土建屋といったところでしょうか。
 
これらの共通点は、全て稼ぐというよりも、規制や、補助金といった税金で成り立つ産業であることです。
 
企業誘致なども見込めない今、自分たちで産業振興しようにもなかなか見通しが立たない中で、今後も利益誘導型に期待するしかないような気がします。
 
繰り返しますが、地方の役人に産業は作れません、かつて通産省が国策で産業作ったという、官僚たちの夏、的なものは神話だと思っています。
 
役人が仕事をすればするほど、地方産業は依存を強めて弱体化していることは、現在の補助金と規制による環境を見れば明らかです。
 
これが地方経済圏の現実であり、鬱屈した空気を作っているのかもしれません。
 
東京は消耗するかもしれませんが、すでに地方は消耗しきっているという厳しい現実を目の当たりにすると、軽々しくIターンは言えないのが本音なのです。