とある地方公務員のブログ

このブログでは地方公務員が日々考えたことや思ったことをなんとなく書きます。

安直な企業誘致マインドが生み出す移住者と地元のミスマッチ問題

 

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増田寛也氏のぶちあげた「人口減少社会」「消滅可能性都市」というショッキングなフレーズは、地方自治体に危機感を改めて顕在化させ、同時に「地方創生」という、どこかで聞いたような(DAIGOのおじいちゃんだっけ??)国策でもって、人口減少に歯止めをかけて、国力の維持を図ろうという方針に地方は付き合わざるを得なくなりました。

地方創生は好機であり、積極的に事業提案していこうと市長の鼻息は荒かったのは今や昔。最初こそ、手厚く国も「先行型」「加速化」という交付金を用意していましたが、100%国費が徐々に減らされ、逆に目先の国費狙いで事業提案をしてしまったもんだから、KPIに5年間は縛られて事務量が増えただけとなってしまいました。

 

前説が長くなりましたが、地方創生は現場自治体にとって、評価・報告義務を課したため、表面的な数字のクリアに不振することになります。そのような人口減少問題に取り組む、重要なKPI数値は今回のテーマである移住者誘致問題です。

 

地方自治体が誘致といったときに、まっさきに思い出すのはやはり「企業誘致」でしょう。

 

 

企業誘致合戦と同じ轍を踏むの?

 

かつて企業誘致合戦で犯した過ち、つまり、減税と補助金というインセンティブを用意すれば、大企業を誘致できて、雇用、税収を生み出すので効果的である。それゆえ企業誘致補助の各種制度を用意した企業誘致合戦が地方自治体で行われました。

 

その結果どのようになったでしょうか?

 

金の切れ目が縁の切れ目。補助期間(だいたい3年間)が切れると撤退される。確かに工場系の企業は雇用吸収力があるものの、それに雇用を依存するとその企業が何かしらの要因で撤退すれば、もはや補助金云々ではないのですよね。そして、企業は撤退したのに、下手に国費を充当してしまったため、処分制限期間で工場跡も解体することができないという最悪な状況となりました。

 

確かにすべてが失敗したわけではありません。しかし、安直な企業誘致は一時的に地元の雇用を生み出すが、それはハイリスクハイリターンであるということを忘れてはいけないということです。

 

移住者なら誰でもOKという節操のなさ

 

企業誘致と同じようなマインドで移住促進を図るとどのようになるでしょうか。移住者が生活しやすいように各種助成制度、たとえば、子どもの医療費は高校まで無償化、移住用の新築マイホームを建築し、信じられないほど家賃で貸し出す、下手すれば無料。いやいや、移住してきた時点でお祝い金をプレゼントしようなどなど・・・

 

まったくもって企業誘致と同じ感覚です。このような発想になるのは、インセンティブを設定すれば、移住につながるという安直な市場原理というものだと思います。隣町よりも手厚く支援すれば移住者が来るに違いない、と。

 

しかし、実際に移住者に話を聞けばわかるのが、移住者の大半は、東京のような大都市に住んでいて、かつての職場環境が厳しく(おそらくブラック企業)精神的に疲弊・消耗しており、地方に行きたいという正のインセンティブより、東京から逃げたいという負のインセンティブのほうが強いわけです。

 

そこで、普通であれば、実家のある地元に帰るはずが、全然縁もゆかりもないところに移住してくる時点で、何かワケあり??と思いますよね。でも、行政はそんなことは関係ありません。定期的に東京や大都市でPR活動をしており、遊びで出張しているわけではないので、移住希望者を「リクルート」するわけです。

 

・田舎でのんびり有機農業をする

・地域のあったかいコミュニティで自分らしく生きる。

・豊かな自然環境の中健康に生活する。

 

などなど・・・・東京で疲れ果てている人にとっては本当に魅力的ですよね。

 

 

地方に住んでいる人間としては、確かに一面正しいのですが、それが移住者も同じようになれるかどうかはやはり、その人によるというのが正直なところです。地方民からすれば、縁もゆかりもない人はやっぱりヨソモノなのです。

 

後述するに、地方には東京にはない、本当に素晴らしい面がある一方で、やはり闇もあります。それを伝えない移住担当者は問題ですが、繰り返しになりますが、消耗していいる東京在住者にはそれを判別することは難しいのかもしれません。

 

 

よそ者、若者、馬鹿者が地域を混乱の渦に陥れる悲惨

 

移住者にはいろいろなタイプがありますが、大きく分けると2つでしょう。一つは、謎のモチベーションにあふれて、積極的に地元に関わる情熱的な人、もう一方は、一人でなるべく隠遁したい人でしょう。

 

このような人は地方にもいます。いますが、条件が決定的に違うのが、移住者は「ヨソモノ」であるということです。かつて、地域活性化は、「よそ者、若者、馬鹿者」が担うということをおっしゃっていましたが、基本的によそ者では無理です。実際はよそ者でも地元と信頼関係をしっかり、それもじっくり構築したうえで地域のコンセンサスを得ながらやっている人が成功しています。

 

「あいつは馬鹿で、まだまだ若造だけど、まあ、やってやろうかえ」という地元の年寄の協力は必須です。

 

でも、そういうことを無視して、東京マインド剥き出しでやってくると間違いなく地元と衝突します。信頼関係もないのに、いきなりプレゼンや、大大的な企画をやっちゃうもんだから、地元は混乱します。

 

逆に何もしないで、隠居みたいな生活をしているよそ者にも厳しく、奇妙がられます。そりゃあそうですよね。しかも勘違いしている移住者が多いので、一言申し上げると、農業はその集落の協力がないとできません。それもわからず農業したい、それもお米を作りたいとしても、無理です。

 

よそ者に先祖伝来の土地を貸したり、田んぼの水を分けるなんてとんでもない話なわけです。やっぱりここでも大事なことは信頼関係。

 

このように書くと、なんて田舎の人は、閉鎖的で村社会的なんだ、ひどい場所だ。と思うかもしれません。でも、地方なんて例えるならば、分譲マンションではなく、シェアハウスのようなところなんですよね。だから、移住者が地方を選ぶように、地元も移住者を選んでいるわけですよね。

 

しかし、行政としては目標達成のために移住促進はハードの支援をすればOK、移住者も誰でもOKとなってしまうわけですから、釣った魚に餌をやっていない状態なわけです。

 

やっぱり東京?地方だったら県庁所在地?

 

このように地方は東京に比べて、のんびりできると思ったら、地域の年寄に配慮して行動しないといけないので、非常に遅く、悪い意味でスローライフ。だけど、スローかと思えば、地元の消防団、草刈、お祭り、世話役を若いからという理由でやらされることになります。(60歳でも青年団はザラ)

 

農業ももはや機械化が進んでおり、自分がやりたいと思っていたのは、農業ではなく大きい「家庭菜園」だったと気づくかもしれません。

 

一方移住を受け入れる地元も外から若い人という割には、教えない、見て倣えみたいな態度だったら、よそ者、それも移住してくるフットワークの軽い若者であれば、さっさと「撤退」しますわな。

 

ということで、もし東京に在住の方が地方に移住したいと思えば、理由はおそらく職場かもしれませんので退職することをおすすめします。(地方の雇用はほぼない、もしくは薄給、しかも物価は案外高い)

 

それか、実家が地方にあるならば実家に帰ることをおすすめします。でもどうしても親元は嫌だというのであれば、県庁所在地をおすすめします。理由は簡単であれば、地方でも人が多いので、よそ者に寛容なんですよね。(寛容というか、無関心?)

 

でも、それならば最も人が多い東京ならほぼ他人に干渉されないのですが、いや、濃密な人間関係を築きたいという奇特な人は、地方をおすすめします。

 

行政の移住担当の甘い言葉に騙されないで、冷静に地方を見るリテラシーが求められるということなんですが、それは余りにも身もふたもない結論ですみません。

 

 

 

個人的には外部から企業や人材を誘致するという攻めの姿勢も大事だと思いますが、それ以上に足元の地域資源の総括が必要だと思っていますので、安易に他力に頼らず、まずは地元を大事にしていこうよ、ということです。(あれ、これってトランブ大統領と同じ発想??)