とある地方公務員のブログ

このブログでは地方公務員が日々考えたことや思ったことをなんとなく書きます。

行政計画は踊る、されど進まず

 

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行政の計画というと、住民の方はあまり馴染みがないかもしれませんが、役所の花形部署といえば、この計画を作ることといっても過言ではありません、むしろ、計画づくりが役所のメイン業務というぐらいですから・・・

 

今回は、役所の職員にとっては重要な行政計画について書きたいと思います。(※今回は行政の立案する、○○計画、○○プラン、○○大綱などを総称して行政計画と呼びます)

 

計画って何?って方へ

そもそも、市の行政というものは、まずは首長のビジョンがあり、それが基本構想という形で具体化されます。しかし、基本構想といっても、まだまだこんな街にしたいというレベルなので、具体的にいつまでに何をする、というより具体的なプランを作る必要があり、それらが各部局ごとに作成され、総合計画という形で作られます。この総合計画が、今後何年間かの自治体の方針であり、今後首長が変わらない限り継続される「路線」になるわけです。

 

また、自治体の作る計画は、そのほかにも災害発生時の「地域防災計画」や、地域のつながりを支援、促進する「地域計画」今後の行財政改革を示した「行財政改革プラン」など、まず市の仕事は計画ありきなので、このような○○計画が部署の数だけあり、それが改定されたり、新たに作られたりして今に至るわけですね。

 

なので、自分の街が何をしているの?と疑問に思えば、先ほどの総合計画や各部署ごとの作成する行政計画を見れば、だいたいの路線がわかります。

 

誰も計画を知らない

しかし、役所には、この計画を作ることそのものが目的化している節があり、その計画を実施する職員が知って初めて機能するのですが、職員が計画を知っているのは少数であり、計画の存在は知っていても読んでいないのではないでしょうか。

 

総務企画系の部署が、物凄く残業して計画を作っても、きれいに冊子になったものは部局長クラスや、各課に一冊送付されるぐらいでして、直接レクを受けるのは、役所の幹部クラスのみなので、末端までは浸透するわけがありません。

 

せいぜい課内会で軽く説明があるだけで、ひどい場合は庁内掲示板にちょろっと出るぐらいです。見てみると何ページもあるPDFが添付されており、見ようと思わないし、それを熟読する暇なんてありません。

 

ちなみに、計画より重要な条例も官報、公報という形で出ていますが、国、自治体から出ていますが、あれ読んでいる人はよほどマニアだけだと思いますし、市民も含めて誰も知らない、細かい条文の一言一句が変わって、どれだけ解釈が変わって、どれだけ影響があるかなんてわからないんですよね。

 

誰のための計画か?

たとえば、自治体の災害発生時に備えて、災害対策基本法や災害救助法に則って地域防災計画というものが作られるわけですが、これも総合計画ほどではないのですが、分厚いので全部読む職員は少数であり、読むとしてもせいぜい自分の役割についての箇所です。

 

しかし、実際の災害ではそんな自分の役割だけフォローしていては追いつかないんですね、たとえば、避難場所は誰が開けるのか?避難場所が壊れていたら誰が修理するのか?犬や猫、はたまたペットの爬虫類を連れてきたらどうするのか?ご遺体の取り扱いなどなど、つまり、縦割りの業務計画では機能しないわけです。

 

なので、役割がなんであれ柔軟に対応できるのが望ましいのですが、計画がなければ大組織は動かないし、計画が膨大すぎても誰も読まないという状況になるわけですね。

 

計画管理計画?

行政の仕事は自己増殖するという有名な説がありますが、計画も自己増殖するのか、増えすぎた計画を管理するための計画が作られるわけですね、ナントか管理基本計画、この管理計画が本当に多すぎるわけです。業務効率化のために作られた数ある行革推進「計画」を「管理する計画」など、もはや本末店頭というレベルです。

 

計画もいわばハコモノと同じように毎年改正をしたり、管理維持コストがかかるわけなので、良くも悪くも、作っておしまいというわけにならないわけです。しかし、これもハコモノと同じように誰も利用しないのです。

 

政権交代ともに、消える膨大な計画

しかも、政権がコロコロ変わるたびに計画も消えます。今でいえば、今は地方創生、ちょっと昔はコンクリートから人へ、昔は地域振興券、もっと前はふるさと創生と時の政権の目玉政策もコロコロ変わってしまい、そのたびに計画が作られては、抜本的見直しの名のもとに消えてしまう。

 

もっとひどいのは、首長が変わると、まさに「革命」であり人事ルートから計画もガラガラと変わってしまうので、それが革新から保守、官僚出身から民間人、と首長が変わるとすべて変わってしまうんですね。消えないにせよ、首長もカラーを出したい、パフォーマンスをしたいためにさらに計画が作られる。

 

まずは総合計画を読もうかな・・・・

計画は当然必要です、計画がなければ動けないのは組織の性格ですが、それが実働の兵隊まで浸透しなくては何も進まないのも事実です。議会に対しては仕事をしているアピールになりますし、国や県もそんな計画を求めているのですが、なぜその計画が必要か?というそもそも論については言及しない、それが役所にある問題の一つであると思います。

 

とはいえ、せっかく労力と予算をかけて作られた計画を読まず批判するのは、それこそ問題があると思うので、まずは自分の街の「総合計画」を読むということが大切かと思います。結局、総合計画が今後の市の動向を決めているわけであり、自分の役割も見えてくるというものです。なので、時間を見つけては熟読していこうかと、思います、、、、が

 

計画に時間を割かれる現場

現場の職員にとっては、この計画が邪魔でしょうがない時があります。いわゆる総務系から出される「宿題」というやつです。たとえば、「今度ナントか計画策定にあたって、調査をするので、期日までに調査回答を求む」という形で宿題がやってきます。しかし、数字を過去数年間拾ってきて、作文をするのですが、非常に面倒であったりします。

 

地域の実態把握ということで定期的に行われる調査も、町内会長、民生委員、そのほか地域で活動されている方にお願いして基礎数字を拾ってきてできあがるのですが、その取りまとめは非常に難しいわけですね。

 

計画の策定の建前は、地域と共に作るということであるので、さまざまな調査や地域集会、さまざまな地域代表者を集めた審議会などを経て作られます。なので、計画策定には多くの人の労力がかかって作られるわけです。(たとえ、そのような集会が行政のアリバイ作りという批判があったとしても。。。)

 

なので、本来であれば、そんなに苦労して作られた計画ならば尊重したいところですが、計画ばかりで実際は思い描くほど進むわけではありませんし、現場からすれば理想のように感じるところもあるので、そこが現場と計画のギャップであって、それを解消していくことが本当の課題といえます。

 

結局、紙で作られた計画に血を通わせるのは、現場の職員と地域住民であるので、泥臭くても、粛々と地域の理解を得て進めることが、ひいては地域の発展につながると信じたいと思います。