とある地方公務員のブログ

このブログでは地方公務員が日々考えたことや思ったことをなんとなく書きます。

有利な起債が生み出すモラルハザード

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最近まったく書いていないことに気付いて、久しぶりに書きます。
無事、年度も本日で終わり、これからは出納整理期間は、支払いで若干ばたばたするものの、実際、予算編成期時期、年度末に比べれば、異動もしたばかりで落ち着ける期間であるので、ワークライフバランスのライフの部分をこの期間に取り戻したいと思います。

 

とにかく「カネ」がないと何もできないんやー!!!


ふりかえれば、平成27年度はTPP対策の大型補正、地方創生バブル(26年度と比べて萎んだけど)とやはり3月補正はドタバタでしたが、しばらくはどの自治体も地方創生の戦略、総合ビジョンを作り、慣れないKPIと悪戦苦闘する日々になることは間違いありません。


また、最近の政治情勢は「フレーズ」に事欠きません。アベノミクス、三本の矢、一億総活躍、地方創生、話題のフレーズが次から次へと出てくる一方で、実際の地方では景気回復の実感がなく、さらなる産業政策で何とかてこ入れをしなくては、持続していない状況です。しかも、その産業政策も結局、国の補助メニューに合致しないと実施できず、よほど首長の強い意志がなければ、一般財源投入はしません。

国の補助メニューを利用すると、すぐ思いつくのがひも付きの補助金、国庫補助金の類を思いつくかもしれませんが、実際運用していると、このようなお金は使いづらいうえに、後々会計検査の検査対象(いわゆる会検)になりますし、どうせならば、地方交付税のようなひも付きではないお金を使いたいと思うわけです。

とはいえ、地方交付税は地方の実情を把握するために、いろいろ複雑な制度設計となっているし、結局地方財政計画のフレームで制約があるので、受け取れる金額も限界があります。

 

確かに、地方創生のように政権のカラーが色濃くでているものは、特交措置を目当てに「素晴らしい」計画を策定して、お金を国から貰うわけですが、まあ、そこは財政サイドと企画総務サイドの腕の見せ所であるわけですが・・・


そこで財政課の職員はもっと他に歳入はないか、県単、国、いろいろなルートをさぐって歳入をさがすわけですが、やはり、地方財政においては起債というのが有力な財源獲得手段であることは間違いありません。起債、地方債、早い話が借金ですね。

 

有利な借金は借金じゃない!?

 

地方債のメニューは一般単独債やら、臨財債、過疎債やら、いろんな起債メニューがあり、そのメニューに合致するものを財務省に提出して起債を打つわけですね。(正確には所管の財務局に借入をする)

 

借金は通常、返すもの、しかも通常は利息を付けて返すものであり、借金は有利も不利もなく、消費者金融のイメージもあってか、借金=悪いものという意識を持つ人も少なくありません。しかし、しかしですよ。その借金が全額返さなくていい。国が一部肩代わりしてくるとしたらどうですか??

 

たとえばですが、1億借りて、そのうち、7000万円キャッシュバックがあるとしたら、実質3000万円の自己負担で済む、といううまい話があったらどうですか??


それが、あらゆる起債メニューでも圧倒的な有利な起債である、緊急防災減災事業債というわけです。充当率、算入率、どれをとっても有利です。

 

http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/zaisei_info/pdf/zaiseisoti25.pdf

 

確かに1億借りたら、一億返さなくてはいけないものもある一方で、一定額が交付税というキャッシュバックで返ってくるものもあります。なので、一言で借金、起債といっても異なるわけなんですね。

 

じゃあ、財政課はいずれ一般財源で償還しなくてはいけない起債よりも、交付税キャッシュバックがある起債、いわゆる有利な起債を利用しようというインセンティブが働くわけです。財政に余裕がない地方自治体の財政担当者としては、至極当然の考えだと思います。

 

借金を借金で返すという悪循環

 

しかし、ふつうの感覚、というか財政担当もそれは知っているのですが、そのキャッシュバックの原資も元をたどれば、税金、というか、国債、借金なわけですね。なので、地方を子供として、親を政府とすれば、子供の借金を、親が借金して肩代わりしているという笑えないことになっているわけです。

そもそも、日本の起債メニューは、ハードに偏っているので、どんどん地方ではハコモノができるわけですね。ハコモノができれば、首長のアピールにもなるし、短期的には土建者にカネを供給できる。しかも、その原資は国が負担する。こんなうまい話ないですよね。じゃあ、やろう、と。

 

なので、制度自体がモラルハザードを生みやすい形になっており、首長が選挙を見据えてハコを作りたがり、それに付き合って財政サイドはそのような起債メニューを使って金を引っ張る。そして、どんどん都市計画なんてこれっぽちも考えていないように、公共施設をガンガン作って、維持費が将来の財政を圧迫するということで、現在の公共施設マネジメントにつながるわけですが。。。。

 

それでも、借金はやめられない!!ハコ作りたい!!わー!!!

 

地方経済のてこ入れ策としては、公共事業が最も有効です。だから、ハコモノを作るのは単純に首長の選挙目当てというわけでもないんですが、やはり、景気よくハコ作りたいんですよね。甘い収支計画、民間なら絶対でスタートしないようなビックプロジェクトができるのも、有利な財源があるからです。

 

しかし、ハコのイニシャルコストは安くできても、ランニングコストはすべて一般財源です。いずれ、必ずその代償は返ってくるということを忘れてはいけないけど、あー、起債の借入の時期を考えるとそんなこと言ってられませんね。明日も早いので寝ます。おやすみなさい。